うちのねこさん、すじ金入の病院嫌いです。
生後半年くらいで避妊手術をしたとき、何かあったみたいです。
具体的に何があったかはわからないのですが、手術が終わり迎えに行くと、ねこ病院の先生からもう来なくてよいといわれました。
とても怖がりで気の小さい子です。
恐怖のあまりパニックを起こしたに違いありません。
かわいそうなことでした。
その後病院に行くたび、ケージの中で、凶暴な姿に変身!
恐ろしい唸り声をあげ、誰も寄せ付けないバリアを張りまくっていました。
新しいねこクリニックの先生は、それが恐怖と戦う精一杯の表現だと、性格をよく理解してくださり、無理な治療や投薬はされません。
賢明な判断は、その後何年にも渡る信頼関係を病院と結ぶことができ、ねこさんにとっては幸いな事でした。
先日、朝起きてみると、ねこさんが寝ていたシーツに血の滲んだ形跡が\(◎o◎)/!
どうしたの?とのぞきこむと、ピンクのおしっこを流しているではないですか。
これはただ事ではない!
病院に電話して、すぐに連れていきました。
数年ぶりの診察にも、相変わらずウーウー唸り声をあげていたねこさん。
幼いころのトラウマは、今もねこさんの中で生き続けています。
実は私も病院が苦手です。
検査が、特に注射と放射線関係がダメなんです。
注射を打つため腕を差しだすと同時に、ひざはガタガタ動き出します。
レントゲン室も同様で、入室したとたん動悸と息苦しさを感じ、ほんの数分の撮影時間中逃げ出したいのを我慢するのに必死です。
歯科治療の為のレントゲンで、我慢できなくなり泣き出したこともありました。
これはがん治療の精神的副作用、トラウマといってもいいかもしれません。
診断から抗がん剤治療、放射線治療と、時々刻々進む事態の中、今振り返ってみると、がんにかかった自分を受け入れる心の余裕はまったくありませんでした。
治療も一つ一つが強力です。
髪も抜けますし、白血球も減る。粘膜の炎症は呼吸にも影響がありました。
そんな一大事が、色もなく音もなく、無色透明の液体が体に侵入することで進行していく、得体のしれない恐怖がありました。
それになんといっても、死に対する恐怖は自分が思っているより大きかったのかもしれません。
そんなわけで、寛解を得たのちになってのち、様々な症状が出たわけです。
ところで先日、会社の健康診断でバリウムを飲んで行う胃の検査をすることになりました。
一度受けたこの検査で、バリウム液がどうしてものどを通らず、泣きながら検査をした経緯があり、それからずっと検査自体を避けてきたのですが、今回新しい病院に代わり受けなければならない雰囲気ができていました。
今日も検査拒否をしようと思っていた矢先、あまりの緊張状態を変に思った女性の検査技師さんが声をかけて下いました。
事情を話したところ、
「それは大変だったね。無理は絶対にダメだよ」
と、思ってもいなかった共感的態度で接してくださいました。
そして、その女性技師さんはマンモグラフィーの担当だったのですが、胃の検査室にいらっしゃるではないですか。
「私が担当しますよ。できる範囲でよいのでやってみませんか」
この言葉に、拒否するつもりだった私の心は動きました。
「この人なら」という声が、かすかに自分の中に聞こえました。
そこで、
「子供のようなことを言ってお恥ずかしいですけれど、一緒に応援して下さったらできるような気がするのです。やってみようと思うので励ましてくださいますか?」
と私は申し出ました。
技師さんはしっかり受け止めてくださいました。
その方が素晴らしかったのは、ただ励ますだけでなく今日の検査の意味と、タイムリーな進行状態を丁寧に説明しながら検査されていったことでした。
次第に私に画像を見る余裕さえうまれてきました。
バリウムの気持ちの悪さは変わりませんが、今ここでの検査の進行状況が理解できただけで、放射線に対する恐怖心は不思議なほど薄れていったのでした。
この心の余裕はどこから生まれたのでしょう。
女性技師の受容的な態度から生まれた安心と信頼感が、恐怖にとらわれていた心のベクトルを変え、すこし緩めててくれたのかもしれません。
状況が理解できたことで、受け身でなく主体的な態度に変わることができたのも理由の一つでしょう。
闇の中を行方も分からずいく不安はここにはありませんでした。
ほんの少しの励ましと心使いが、心に変化をもたらしたのでしょう。
一緒に歩んでくれる人がいるだけで、闇の道も勇気をもって進むことができるのかもしれません。
心の働きは不思議なものです。
診察台にのせられたねこさんは、ウーウーと恐ろし気に唸っています。
私には、「怖いよー、怖いよー」と恐怖に怯え、必死に叫んでいるように聴こえていました。
「大丈夫だよ。怖くないよ。えらいね。いい子だね・・・・・」
私は、自分のできうる限りに優しい声をねこさんにかけ続け、点滴治療を施すことに成功しました。
「この子を治療できるなんて!!」
十数年ぶりの快挙に、お医者さんと私は思わずウルウルして顔を見合わせたのでありました。
🐈🐈🐈love of cat🐈🐈🐈
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